対談

「正社員」でありながら「自由度」とは (日本経済新聞掲載)

作家・経済ジャーナリストの渋谷和宏氏とテクノプロ・ホールディングス社長兼CEO(最高経営責任者)西尾保示が対談しました。

日本経済新聞朝刊広告紙面にて掲載(2016年6月6日)

シリーズ対談「日本のものづくり担う派遣技術者とは」。2回目の今回は前回(5月23日付日経朝刊に前編を掲載)に続き、著書「働き方は生き方」(幻冬舎文庫)で派遣技術者に焦点を当てた作家・経済ジャーナリストの渋谷和宏氏と、技術系人材サービス大手、テクノプロ・ホールディングスの西尾保示社長兼CEO(最高経営責任者)による対談の後編です。今や20万人を超え技術者全体の1割強を占めるといわれる派遣技術者。日本のものづくりを随所で支える存在ですが、メーカーの技術者とどのように違うのでしょうか。

渋谷氏2回目

渋谷 今や日本のものづくりは派遣技術者なしに成り立ちません。メーカーでは、技術者は必ずしもずっと技術畑を歩いていけるわけではありません。優秀な人ほど管理職(マネジメント)にいきがちです。現場を離れると技術的には陳腐化していきますので現場での問題解決が難しくなる。技術と知識、ノウハウを身につけた派遣技術者(スペシャリスト)がいないと前へ進めなくなっているんですね。
西尾 たしかに一連の工程のなかでメーカーさんの技術者と派遣技術者の分業が進んでいます。若手の派遣技術者は図面修正や設計補助から徐々にスキルアップし、ベテランになるとチームリーダーとして教える側に回るようにもなります。
渋谷 メーカーの技術者であれ派遣技術者であれ、自分の価値観に合う方を選べばいいのですが、メーカーの技術者の場合、近年の実例が示すように事業部門ごと消滅するようなリスクがあることを意識しておくべきです。
西尾 メーカーさんからは技術者の受け入れを含めて様々な相談を受けます。当社は過去のデータ分析から、ある産業の技術者がどのようなスキルを身につければ次にどの産業で活躍できるかが見通せます。そこが強みです。
渋谷 メーカーの正社員の技術者になれば生涯安泰というわけではないことを若い人もよく分かっています。技術者として常に第一線で活躍していたい、そのためのステップアップを会社の名前などよりも優先して考える人が確実に増えています。
西尾社長2回目西尾 雇用の安定性という意味でメーカーの技術者も派遣技術者もあまり変わらないといえます。むしろ当社の技術者を見ていてうらやましいと思うのは、正社員でありながら自由度を持っていることです。当社は入社時も、契約が終了して次の仕事を決めるときも、技術者の希望を聞いてできるだけかなえるようにしています。メーカーの正社員ではそうはいかないでしょう。
渋谷 一方で派遣技術者の人たちは常に市場の評価や時価評価にさらされていると感じます。それだけに自分の強みを発揮できる分野で勝負したいと考えるのはよく分かります。
西尾 そのぶん現在の自分に安住せず、何事にも主体性を持って取り組み、どんな小さなことでも改善提案をしてお客様に喜ばれる技術者であってほしいです。
渋谷 派遣技術者の方々をインタビューして強く印象に残っているのは、能力向上へのモチベーションが高く、自分の仕事に真摯に向き合い、他人のせいにせず最終的に全てを自分で引き受けるという潔さです。そういう点で一つのやりがいのある選択肢だと思いました。
西尾 今後は出産・育児・介護などで一時的に働き方が制限される技術者や研究者に、より多様な就業機会を提供したいと考えています。そのために自社の開発センターなどを活用した受託・請負業務にも力を入れていきます。

※掲載された紙面がPDFで開きます。

合わせて読みたい

対談 一覧へ