技術者派遣への正しい認識が社会に広まってほしい
ご自身も経験された技術者派遣でのキャリアの積み方について、どのようなお考えお持ちかお聞かせください。
北原 確かに『派遣』は社会的に少しネガティブに認識されていることは感じます。
リーマンショック後の派遣切りや日比谷公園の派遣村などの印象が強すぎて不安定なイメージがあり、こころよく受け止めにくい言葉になってしまったんでしょう。
でも、テクノプロも含め技術の世界では大半が正社員雇用ですよね。お客様の構内でお客様と一緒になって開発をサポートしますから、確かに契約形態は派遣です。
でも、その仕事が終わっても一度会社に戻るだけなので、「派遣は不安定」という言葉は私たちからすると見当違いな面があると思います。
正社員として派遣制度のもとで仕事をしている技術者の存在があまり知られていないことも誤解を生む要因かもしれません。
私自身は、派遣だからといって仕事上の区別や差別を受けた経験はありませんし、お客様や派遣技術者本人の認識と、社会における理解の間にある乖離は解消されてほしいと考えています。
私はDS社で働いていることに誇りを持っていますし、開発業務に携わるという意味では非常に意義のある働き方だと思います。
メーカーは新製品や新技術の開発が多忙だからこそ派遣技術者にサポートを依頼するわけですから、結果として派遣技術者には新製品開発や新技術開発に関わる仕事を手がけるチャンスが多くあります。
もしメーカーの技術者だったとしても、そのような仕事に関わる人は社内でも限られますから、運よく新製品の開発を手がけられるとは限りません。
そう考えると派遣技術者としてメーカーで仕事をすることには技術者としてのスキル向上という面での優位性はあるのではないでしょうか。
私の思い入れが強すぎるのかもしれませんが、だからこそ「テクノプロのエンジニアは絶対にメーカーのエンジニアに負けない」という自信を持っています。
技術者派遣についてのポジティブな理解を広めるために何が必要でしょうか?
北原 多くの技術者が派遣技術者としてメーカーの開発業務をサポートしているのは厳然たる事実ですから、それを正しく表現し、社会に広く認識してもらうことが必要ではないでしょうか。
技術サービスの現場で活躍するすべての技術者が自信と誇りを持って働ける環境の整備は、今後ますます重要になってくるはずです。
会社には技術者派遣に対する正しい社会認識の醸成に向けた取り組みをお願いしたいですし、そのために、たとえばメイテックさんなど同業他社と協力することも選択肢として検討してほしいですね。
後輩エンジニアに伝えたい四つの「大切なこと」
エンジニアの先輩として、若手へのメッセージをお願いします。
北原 先ほどお伝えした恩師の言葉に加え、仕事に取り組む姿勢として私なりに大切だと考えている四つのポイントがありますので、ここでお伝えしておきたいですね。まずひとつには、言葉遣いです。
フランクな話し方が適している場合もありますが、常に相手に対して尊敬の念を持って話すことはとても大切です。
真剣な仕事の場面で馴れ馴れしい態度で話されると、あまり感じの良いものではありません。尊敬語、丁寧語、謙譲語を正しく使うこと、その基本ができて初めて良好な人間関係が構築できるのです。
正しい言葉遣いというものは、自分自身の技術力や知識に自信があればあるほどおろそかになる傾向があります。
必要以上に慇懃にならなくてもいいのですが、TPOをわきまえた正しい言葉遣いは仕事の第一歩だと思います。
2つ目は、「まず、やってみる」という前向きな心構えです。何であれ「言われたことだから」と嫌々やることに意味はありません。
最初は仕事の目的や意味が分からずなかなか意欲が湧かないかもしれませんが、とにかくやってみることで「なぜこの仕事をしなければならないのか」「一人ひとりに果たすべき役割が必ずある」といったことが不思議と見えてきます。
そうなると自分のすべきこともより明確になり、さらにやる気が出てきます。人それぞれ仕事の進め方が違うのは当然ですが、まずは前に進む努力をしなければ始まりません。
そして3つ目は、仕事に興味を持つことです。誰だって興味を持てないことに対してはやる気が出せませんよね。自分がやっている仕事に興味を持てればやる気も生まれるし、やる気さえあればおおよそのことは何とかなるものです。
最後のポイントは、できるだけ顔を合わせて話をすることですね。
私が新卒の頃はまだパソコンなどの環境が整っておらず紙の書類でのやりとりが多い時代でしたから、直接会って詳しい話を聞かないことには仕事が先に進みません。
そういったプロセスを通して意思疎通を図ることが大切であるだけでなく、会話を通じて相手の人となりを知ることで誤解が生まれにくくなるというメリットもありました。
最近はPCを使ってコミュニケーションすることが増えましたし、仕事上のルールとして証跡を残す目的で電子メールを使わざるを得ない場合も多々ありますが、相手に面と向かって会話することも大切にしてほしいですね。
気分転換におすすめしたい「料理と草むしり」
最後に、仕事以外で何かご趣味をお持ちであればお聞かせください。
北原 趣味というほどではありませんが、料理はけっこう好きですね。
最近はあまりやらなくなってしまいましたが、昔はいろいろ料理の本を買ってきては、あれこれ作っていました。そもそも技術者は料理に向いていると思うんです。
レシピに定められたプロセス通りに調理を進めていくと、仕様を満たした期待通りのおいしい料理ができあがる…。
これって技術の仕事に通じるところがあると思いませんか?(笑)
あとは、これも昔の話ですが、仕事が暗礁に乗り上げてしまい、どうにもこうにも成果が出せない時がありました。
そんな折に、ふと思いついて庭の草むしりをしてみたんです。
庭の端からどんどん草を抜いていくと、見事なまでに目の前で成果が出るのが楽しくて、ときどき気分転換としてやっていました。
ちょっと風変わりな方法ではありましたが自分には効果がありましたので、みなさんも仕事に行きづまったら料理か草むしりをしてみるのはどうでしょうか。けっこう良いと思いますよ!(笑)
(2016.02.05)