中田喜文の「エンジニア。データからはこう見える!」

Vol.3 「求人倍率7.34倍」これは何の仕事?

同志社大学STEM人材研究センター長の中田喜文です。
本コラムでは、日々技術者について研究を進める中で出会った色々な数字を、毎月1回程度ご紹介しています。今月は人手不足をテーマにご説明します。
早速ですがここでクイズです。
「求人倍率7.34倍」さてこれは何の仕事でしょう?

人手不足の程度を表す指標の一つに「有効求人倍率」があります。求人倍率とは、日本全国にある公共職業安定所(ハローワーク)に登録された求人数、求職者数データを用いて、求人数を求職者数で割った比率です。つまり、仕事を探している人一人に対し、何人の求人があるかを表します。ですから、この比率が1を超えると、求人数が求職者を上回り、求人が満たされない状況が発生している状況、つまり人手不足が起こっていると言えます。ちなみに、“求人倍率”という言葉の前につく「有効」が意味するのは、分母(求職者数)、分子(求人数)に使う数字が、ハローワークへの申し込み期限が有効とされている(古い数字ではなく、現在の数字)と言う意味で、さしあたりこの2文字は無視しても大丈夫です。

さて、この有効求人倍率で見た時、以下の5つの職種の内、一番人手不足が深刻な仕事はなんでしょうか。これが今月のクイズです。

1.介護職
2.販売職
3.調理師
4.建築土木技師
5.ソフトウェアエンジニア

少子高齢化の進展で、日本は1960年代の高度経済成長期以来の人手不足の時代に突入しています。高齢化は、必然的に介護需要を高め、介護職不足への対応のため、海外からの介護労働力の導入も検討されています。加えて、近年は、インバウンドの観光が好調で、多くの旅行者が海外から日本を訪れ、彼らの旺盛な購買ニーズの結果、百貨店や大手ドラッグストア、さらには各種レストランがにぎわっています。その結果、調理師や販売職の求人をよく見かけるようになりました。さらに2020年は、オリンピックイヤーです。関連施設のみならず、首都の都市機能の高度化に向けて、都内のあちこちで建設ラッシュが続いています。当然、土木建築関連職に対する需要は高水準を維持しています。そしてIoTとAIです。以前に増してスピードを速める社会の情報化を担うソフトウェアエンジニアは、今やすべての産業で求められています。

このように、上記の5つの職種は、現在求人が高まっている職種の代表です。では、これら5職種の有効求人倍率はどうなっているのでしょうか。公表されている最新データである、2019年11月数値によると、上記5職種の有効求人倍率は以下の通りです。 ※

※「一般職業紹介状況」長期時系列表11-3 職業別労働市場関係指標(実数)(平成23年改定)第11表-2(有効求人倍率)(常用(除パート))

介護職  3.75
販売職  2.19
調理師  3.07
建築土木技術者 7.34
情報処理技術者 2.42

ちなみに、すべての職業の平均は、1.46です。上記数値から、クイズの答えは一目瞭然。人手不足が一番深刻なのは、そう「建築土木技術者」です。インバウンドや人口高齢化に伴う労働需要よりも、どうやら現時点では、オリンピック関連そして老朽化した社会インフラの更新に必要な労働需給が最もひっ迫しているようです。

このように社会や経済の状況を鋭く反映する求人倍率は、必然的に時とともに変動します。では、どの程度変動するのでしょうか。情報処理技術者を例にその変化を見たのが図1です。時代とともに大きく変動していることがわかります。2000年度以降で最も倍率が高まったのは2006年度の3.72倍です。しかし、3年後には0.52と、ほぼ7分の1まで倍率が低下します。リーマンショックによる世界経済、そして日本経済のマイナス成長がその原因です。しかし、その後日本経済は回復し、情報処理技術者に対する求人が着実に増大し、ここ2年間では倍率は2.6倍程度で高どまっています。

ちなみに、図1の黒破線が表す職業全体の動きも、水準は情報処理技術者と比べ低いものの、ほぼ同様の動きを示し、2006年度をピークに2009年度には、約3分の1の水準まで低下した後、その後は着実に上昇を続け、2018年度には、1.42まで高まりました。このように、各職種の求人倍率は、日本経済全体の動きに影響を受けながらも、職種ごとの特殊性によって大きく異なることがわかります。

図1 情報処理技術者の有効求人倍率の年変化(2000年度~2018年度)
:赤実線=情報処理技術者、黒破線=職業計

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