中田喜文の「エンジニア。データからはこう見える!」

Vol.11 「皆さんのふるさとは何位?」

同志社大学STEM人材研究センターの中田喜文です。
本コラムでは、日々技術者について研究を進める中で出会った色々な数字を、毎月1回程度ご紹介しています。
このコラムは、昨年の10月から始めましたが、いよいよ2年目に入ります。これまでの1年は、もっぱら日本の技術者について、その平均像を語ってきました。10本のコラムである程度、世界と較べた日本の技術者の特徴が浮かびあがったのでは、と思います。


2年目はどんなネタで行こうか、とテクノプロの担当者の皆さんと相談して決まったのが、日本を飛び出して世界の各国ネタです。色々な国の技術者が、日本とは異なる形の教育や訓練を受け、異なる形で就職し、異なる形で給与が決まっている現状をご報告します。皆さんと一緒に、アメリカ、中国、ドイツ、フランス、フィンランドなど世界の技術者の“今”を見て回りましょう。
どうか次回以降のコラムを楽しみにしておいてください。

え、今回からじゃないの?と思われたでしょう。そうです、今回は番外編です。
このところ新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅勤務が様々な職種に広がっています。ある調査によると色々な職種の中で、在宅勤務率の最も高い職種の1つがエンジニアです。 2020年5月時点ではエンジニアの75%、つまり4人の内3人が在宅勤務をしていました。(※1)
このコラムを読んでくれているのはエンジニアの方が多いと思いますので、だとすると皆さんの多くも現在在宅勤務中で、この記事もご自宅で読まれたりしているのでしょうか。

※1 『これから、シゴトとどう生きる?8万人意識調査から考える「#シゴトの未来」』Wantedly 2020年5月8日Press Release, https://wantedlyinc.com

それでは、今月のクイズです。

Q:47都道府県のなかで、就業者に占める技術者割合が最も高いのはどこでしょう?
今回は以下の1から5の選択肢を用意しました。
1. 東京
2. 愛知
3. 大阪
4. 神奈川
5. 滋賀

技術者が一番多く住む都道府県ではありません。就業者に対する技術者の割合です。あえて言えば働く人の中での存在感の高さですね。さて技術者の存在感が最も高い都道府県はどこでしょう?

ヒントは、技術者が働く産業です。技術者はどのような産業で働いているかはわかりますね。
先ず思いつくのは製造業でしょう。設計、開発から生産技術まで様々な場面で活躍されています。それから情報産業です。ICT技術者の多くが働く産業です。
表1は日本の技術者の多くが働く5つの産業における技術者数と全産業での分布割合を示しています。

表1 日本の技術者の就業する産業:2015年、男女計

出所:総務省『国勢調査』、2015年
産業分類
人数
分布%
建設業
279,620
11.8%
製造業
673,430
28.3%
情報通信業
769,030
32.3%
卸売業,小売業
80,640
3.4%
学術研究,専門・技術サービス業
369,780
15.5%
産業計
2,379,060
100.0%

製造業と情報通信業で、技術者の約60%が働いています。と言うことは、1から5の都道府県の中で、この2つの産業が盛んなところを考えれば良いとなります。さらに付け足せば、職場と住居の位置関係でしょうか。職場が同じ県内にあればもちろん通勤は楽ですが、近隣県であっても公共交通機関がしっかりしていれば越境通勤は可能です。すると正解は、県内にエンジニアの職場が多く、かつ近隣県の住環境が優れ交通インフラが整っていて通勤しやすい都道府県となりそうです。

では、改めて問題です。47都道府県のなかで、全就業者に占める技術者割合が最も高いのは、以下の1から5のどこでしょう?
1. 東京
2. 愛知
3. 大阪
4. 神奈川
5. 滋賀

では、解答です。表2をご覧ください。

表2 就業者に占める技術者割合(%)上位5都県

出所:総務省『国勢調査』、2015年
順位
地域
技術者
内訳
ICT技術者
その他技術者
1
神奈川県
7.67%
4.17%
3.50%
2
東京都
6.24%
4.11%
2.13%
3
千葉県
5.02%
2.93%
2.10%
4
愛知県
4.95%
1.47%
3.48%
5
埼玉県
4.61%
2.42%
2.19%

47都道府県の内、技術者割合の高い5都府県の割合と、ICT技術者、およびICT以外の技術者割合に2分した一覧表です。ICT技術者では、神奈川、東京が高いですね。しかし、ICT以外の技術者では、神奈川県と愛知県で高いです。

以上より、両タイプの技術者を合わせた全技術者割合では、どちらのタイプの技術者割合でもトップの神奈川県が、技術者総計での割合が7.67%と日本のトップとなります。

如何でしたか?正解できましたか?
ちなみに、この表には入っていませんがICT以外の技術者では、滋賀県が3.38%と愛知県とほぼ同水準でした。

東京、神奈川、埼玉、千葉を合わせた1都3県のいわゆる関東大都市圏と言われるような地域に住む技術者総数は98万7000人と全国の技術者の41.5%になります。さらに驚くのは、ICT技術者に限ればその割合は58.1%、と6割弱が集中しています。しかし、コロナ禍でのリモートワークが半強制的に普及し機能したことは、今後リモートワークが全国に広がり、この集中状態を緩和するかもしれませんね。
そういえば、テクノプロでもIT企業や自治体と連携してリモートワーク推進に向けた取り組みをやっていましたね。

働きやすい環境は広さだけで測れるものではありませんが、1人当たりの居住面積は、日本で最も広い富山県や秋田県は、東京都や神奈川県より5割以上広いようです。 (※2)

※2 住宅に住む一般世帯一人当たり延べ面積で見ると、富山県49.3m2、秋田県46.9m2 に対し、東京都29.8m2、神奈川県は、30.5m2です。 (総務省『平成17年国勢調査』) 

さて、あなたが働く都道府県はありましたか?
答えがわかったところで、上位5位以外も気になると思いますので、6位以下の順位もお知らせします。

表3 就業者に占める技術者割合(%) 6位以下

順位
地域
技術者
内訳
ICT技術者
その他技術者
6
滋賀県
4.29%
0.91%
3.38%
7
茨城県
4.10%
1.43%
2.67%
7
兵庫県
4.10%
1.43%
2.67%
9
栃木県
3.96%
0.83%
3.12%
10
静岡県
3.95%
0.99%
2.95%
11
大阪府
3.70%
1.62%
2.08%
12
宮城県
3.69%
1.13%
2.56%
13
奈良県
3.63%
1.28%
2.35%
14
長野県
3.60%
0.88%
2.72%
15
山梨県
3.46%
0.88%
2.58%
16
広島県
3.43%
0.93%
2.50%
17
富山県
3.39%
0.94%
2.45%
18
石川県
3.27%
1.08%
2.19%
19
福井県
3.20%
0.69%
2.51%
19
群馬県
3.20%
0.87%
2.33%
21
三重県
3.08%
0.73%
2.35%
21
京都府
3.08%
1.13%
1.94%
23
岐阜県
3.06%
0.85%
2.21%
24
福岡県
2.96%
1.22%
1.74%
25
岡山県
2.79%
0.88%
1.91%
26
新潟県
2.78%
0.68%
2.10%
27
大分県
2.71%
0.66%
2.05%
28
香川県
2.67%
0.48%
1.95%
29
福島県
2.64%
0.48%
2.16%
30
北海道
2.50%
0.85%
1.65%
31
岩手県
2.43%
0.44%
1.98%
31
沖縄県
2.43%
0.95%
1.48%
33
島根県
2.42%
0.51%
1.92%
34
愛媛県
2.41%
0.48%
1.94%
35
山口県
2.40%
0.50%
1.90%
36
島根県
2.34%
0.41%
1.93%
37
熊本県
2.32%
0.66%
1.66%
38
山形県
2.29%
0.45%
1.85%
39
和歌山県
2.27%
0.54%
1.73%
40
徳島県
2.26%
0.43%
1.83%
40
長崎県
2.26%
0.48%
1.78%
42
秋田県
2.22%
0.32%
1.89%
43
宮崎県
2.14%
0.49%
1.64%
44
高知県
2.08%
0.40%
1.69%
45
佐賀県
1.98%
0.43%
1.54%
46
鹿児島県
1.93%
0.40%
1.53%
47
青森県
1.72%
0.42%
1.30%

皆さんのふるさとはどうでしたか、予想どおりでしたか?それでは、次回から私と一緒に世界の技術者の”今”を見に行きましょう。

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