中田喜文の「エンジニア。データからはこう見える!」

Vol.14 多様性のアメリカ③「アメリカでは平均勤続年数は何年?」

同志社大学STEM人材研究センターの中田喜文です。
前回のコラムから暫く寄稿できず申し訳ありません。今月からは、毎月の話題提供を再開しますのでまた楽しんでいただければと思います。

さて、先回と先々回はアメリカの技術者の給与について取り上げました。今回は、彼らの転職についてです。
アメリカの技術者と言うと”よく転職する”とのイメージをお持ちではないでしょうか。
よく転職するだけでなく、転職するたびに給与が上がる、理想の転職像の体現者のイメージを多くの方がお持ちだと思います。

さて、今日はそのような皆さんのイメージを検証してみましょう。そこで今回の問題です。
アメリカの技術者の平均勤続年数は、以下の選択肢のどれが正しいでしょうか。

①5年
②10年
③15年
④20年

もちろん、いつも通りヒントを提供します。今回のヒントは2つです。
ヒント1)アメリカのすべての雇用者の平均勤続年数は、最新データ(2020年1月時点)によると8年です。
ヒント2)同じ最新データによると、アメリカの技術者の勤続年数の中央値(勤続年数順に一列に並べた時、その真ん中にいる人の勤続年数)は、6年です。

さて、如何でしょうか。下図をご覧ください。

資料出所:U.S. Bureau of Labor Statistics, Current Population Survey, ”the Employee Tenure and Occupational Mobility Supplement”, January,2021.

これは、アメリカ労働統計局によって2020年1月に収集されたデータによる、アメリカの技術者の勤続年数の分布を示すヒストグラムです。面白い形をしてますね。

“よく転職する”というイメージ通り、勤続年数が短いところに集中しています。
ちなみに、最も多くの技術者が集まるのは勤続年数が0年以上~2年未満です。
この様に分布の最も多いグループのことを最頻値(モード)と呼びます。
モード内の中央の値は1年ですので、アメリカの技術者の勤続年数の最頻値は1年と読み取れます。
短いですね。

しかし、勤続年数が10年を超える技術者もかなりいます。約38%です。さらには、勤続年数が20年を超える長勤続技術者の割合は、17%です。このように、多くの短勤続の技術者とそれなりの数の長勤続の技術者に分かれて分布しているため、平均値は10年と中央値や最頻値より大きくなっています。

そうです、今月のクイズの正解は②10年です。如何でしたか、正解できましたか。ヒント1の通り、アメリカ全体の平均勤続年数は8年ですので、全体と比較すると技術者の勤続年数は決して短くはないようです。

日本にはすべての技術者を網羅する正確な勤続年数データが公開されていません。
しかし、参考データとして従業員規模10人以上の企業に限定し、かつ技術士資格を保有する技術者だと平均勤続年数は14年というデータもあります。
貴方は今の会社で勤続何年目ですか?

アメリカはジョブホッピングの文化のように思われがちですが、部分的に強調された情報の方が目に留まりやすい傾向にありますので、そのようなイメージが根強く残っている可能性がありますね。

同志社大学STEM人材研究センターの目的の一つが、「科学技術の領域で活躍する方々がより創造的に活躍できるための環境と施策の構築に資する」研究を行うことです。日本の科学技術発展のためにも、多くの技術者が適材適所で活躍できる環境作りに寄与できる研究を行っていきたいと思います。

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