技術サービス業界での働き方

<その2>動き出した「多様な働き方改革」「ジョブ型正社員」 “あなたの近い将来の働き方”

前回の報告では、規制改革会議で2013年より取り組まれている「多様な働き方改革」について、その背景と5つの改革案をご説明しました。今回は、実現に向けた具体的な例の一つ「ジョブ型正社員」について考察してみましょう。

本稿は、2回シリーズでお伝えしていますので、<その1>をお読みでない方は、先に<その1>をお読みいただくと、全体像がご理解いただけます。

<その1(前回)> :日本型雇用システムの課題と働き方改革の方向性
1. 高度経済成長を支えた日本型雇用システムとその限界
2. 規制改革会議の唱える「多様な働き方改革」5つの考え方
3. 安倍総理の働き方改革会議始動に向けた記者会見
4. 働き方改革実現推進室開所式での安倍総理の訓示

<その2(今回)>:働き方改革の具体例
5. 多様な働き方の具体例としての「ジョブ型正社員」
6. ジョブ型正社員で実現するワークライフバランス
7. ジョブ型正社員とエンジニア派遣の相似性

多様な働き方の具体例としての「ジョブ型正社員」

「多様な働き方」実現に向けた具体的な施策の一つに「ジョブ型正社員」があります。
規制改革会議では「正社員一人ひとりのワークライフバランスや能力を高め、多様な視点を持った労働者が貢献する経営(ダイバーシティ・マネジメント)を促進する」ために「ジョブ型正社員に関する雇用ルールの整備を行うべきである」と示唆されています。

前回<その1>で、日本型雇用システムを「無限定正社員」とご説明しましたが、それと対を成す「ジョブ型正社員」。具体的にその定義と課題について下記をご覧ください。

ジョブ型正社員とは・・・

teigi

ジョブ型正社員で実現するワークライフバランス

仕事における満足度の尺度は人によって随分違うと思います。雇用形態別に仕事に対する満足度、不満ついてヒアリングした下記図表をご覧ください。尚、働き方改革は現在進行中であるため、正社員のセグメント呼称は統一されていません。たとえば限定正社員のことを規制改革会議では「ジョブ型正社員」と称する一方、厚生労働省は「多様な正社員」と称しています。調査実施主体によって呼称に違いがありますが、その定義や云わんとしている対象は同じですので、混乱が生じないよう呼称を列記しております。

hatarakikata

いわゆる正社員(無限定正社員) ―不満の多い項目  「残業が多い」「有給休暇が取りにくい」等
―不満の少ない項目 「雇用が不安定」「働き方によって福利厚生の扱いが異なる」等
⇒ワークライフバランスが保たれていないことへの不満が強い
多様な正社員(ジョブ型正社員、限定正社員) -不満の多い項目  他雇用形態と比較し、突出した項目はなし
-不満の少ない項目 「残業が多い」「有給休暇が取りにくい」等
⇒仕事に対する不満は少なく、ワークライフバランスが保たれている
契約社員等(非正社員) -不満の多い項目  「雇用が不安定」「賃金が安い」等
-不満の少ない項目 「仕事がこなせない、なかなか慣れない」「仕事がきつい」等
⇒能力を超える業務を担うことへのプレッシャーやストレスは少ないが、雇用の不安定や給与等の待遇に不安を抱えている

以上から、多様な正社員はいわゆる正社員や契約社員と比較して、雇用条件に対する満足度が高く、日々の仕事に対してもストレスが少ないということがわかります。

ジョブ型正社員とエンジニア派遣の相似性

ジョブ型正社員とは、職務、勤務地、労働時間などが限定され、仕事に対する不満も少なくワークライフバランスが保たれた状態であることが分かりました。それでは、このジョブ型正社員とエンジニア派遣の相似性を見てみます。

■ジョブ型正社員

1 職務が限定される多様な正社員は「プロ型」。
2 自分のキャリアや強みを認識し、自立的な働き方の実現により長時間労働も抑制できる。
3 多様な正社員も正社員であるため、雇用する企業にとっても教育研修の提供による能力開発のインセンティブが働く。

■エンジニア派遣

1 仕事内容は技術職に限定され、スキルの向上とともに上流工程の仕事に移行する「プロ型」。
2 所定労働時間内で仕事を完成させることが、顧客のメリットになるため、長時間労働の抑制がサービス向上につながる。
3 技術系人材サービス会社の多くは派遣エンジニアを自社の正社員として雇用し、企業格差はあるが自社研修制度又は外部研修機関を活用した教育研修が充実。2015年9月の派遣法改正ではキャリアコンサルティングの充実が明文化されました。

このような技術系人材サービスの特徴を指して、”専門技術者” を “派遣元が無期雇用” し “能力開発の機会” を提供する雇用形態は、まさに働き方改革の『3本の矢』であると指摘する専門家もいます。
エンジニア派遣は、「派遣」という言葉のイメージに大きく影響されどちらかといえばネガティブに捉えられがちですが、その内容を良く知ることにより新たな姿が見えてくるのではないでしょうか。

調査並びに報告:株式会社スマートウィル(報告:2016年9月9日)

 

テクノプロ・ホールディングス 採用担当者より

当社を含む技術派遣会社のエンジニアは、「派遣」という単語に引っ張られて雇用期間が定められている「登録型派遣」と混同されてしまうことが多いのですが、そのほとんどが雇用期間の定めがない正社員です。「様々なプロジェクトに携わりたい」「ある一定の分野に特化してスペシャリストになりたい」と既に明確なキャリアプランを抱いている方、勤務地域を絞って働きたい方など、様々な皆さんのニーズに柔軟に対応できる環境をエンジニア目線で整備しています。当社のエンジニアは、本調査にありました「ジョブ型正社員」にあたりますが、国が改革を推し進めるずっと前から環境整備に邁進して参りました。

技術者派遣会社の正社員であるエンジニアは、技術者派遣会社と雇用期間の定めがない契約を結び、派遣された様々な業種メーカーの開発・設計で活躍しています。特に最近はIoTに代表されるソフトウェア技術の大躍進が進み、メーカー単独で対応することが困難になりつつあります。象印マホービンが発売したインターネットと繋がってお年寄りの安否を知らせる卓上ポットや、各自動車メーカーが争って開発を進める自動運転技術について耳にしたことがあるのではないでしょうか?カバーする技術分野が多岐に渡っている派遣技術者へのニーズは、これからも益々高まっていくことが予想されます。

技術サービス(派遣、請負)がエンジニアの「働き方」の選択肢として世の中に浸透するよう、今後もDoを通して有用な情報をお伝えしてまいります!

 

参考
・内閣府「規制改革に関する第1次答申~経済再生への突破口~」(平成25年6月5日)
・内閣府規制改革に関する第2次答申_雇用分野_~加速する規制改革~」(平成26年6月13日)
・内閣府「規制改革会議第3次答申_雇用分野_~多様で活力ある日本へ~」(平成27年6月16日)
・内閣府「規制改革会議第4次答申~終わりなき挑戦~」(平成28年5月19日)
・安倍内閣総理大臣記者会見
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2016/0803kaiken.html(平成28年年8月3日)
・働き方改革実現推進室開所式での安倍総理大臣の訓示
https://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201609/02kunji.html(平成28年9月2日)
・鶴光太郎他『多様な正社員の働き方の実態―RIETI「平成26年度正社員・非正社員の多様な働き方と意識に関するWeb調査」の分析結果より』(独立行政法人経済産業研究所「労働市場制度改革」)
・鶴光太郎『「雇用を取り巻く環境変化と多様な働き方を目指した規制改革」~これからの人材活用を考える~』(テクノプロ・ホールディングス「コンプライアンスセミナー2016」基調講演より抜粋)

その1

関連記事
「軸」をもった就職活動で“自己実現”
これからのエンジニアの働き方~派遣エンジニア~
<その1>動き出した「多様な働き方改革」「ジョブ型正社員」 “あなたの近い将来の働き方”
エンジニアにおける働き方の種類や選び方について
情報は諸刃の剣 性質を理解して正しく付き合おう
若者よ、自分の将来も「口コミ」に頼るのか?
エンジニア派遣業界、ここ数年で認知度上昇
未経験からエンジニアに転職するには

合わせて読みたい

技術サービス業界での働き方 一覧へ